カードデザイン
刷新プロジェクト
もっと特別で、もっと
使いやすいカードへ
ダイナースクラブカードを持つことがより誇りに感じていただけるように、
60周年を機にカードのデザインを刷新することになりました。
それに加え、新たな機能を搭載することで、利便性とセキュリティの向上にも挑戦。
このかつてないプロジェクトには、どんなやりがいや苦労があったのか。
当時の担当者に話を聞きました。
- 増田
- 商品企画部 法人企画チーム
チーム長 1995年入社
2015年からカードのポイント制度であるリワードプログラムのチーム長を務め、商品企画チームに異動。今回のプロジェクトを成功させ、現在は法人企画チームで指揮を執る。
-
日本においてダイナースクラブが60周年を迎えるにあたり、ブランドの見直し、サービスの改訂など、さまざまな変更が一挙に行われ一大プロジェクトとなりました。その中で、私たち商品企画チームが主に担当したのは、カードのデザイン変更とカードにタッチ決済機能を搭載することです。これまでのデザインはマット加工で、長年使っていくと端が擦れてしまうといったお声もあったので、鏡面(光沢)加工を施すことにしました。これにより、通常のシルバーのカードはよりプラチナ感が増し、招待制のプレミアムカードは黒の濃度を上げたこともあり、真っ黒な輝きを放つカードに。会員様がイメージされる「ブラックカード」にかなり近いものになり、「もっと高級感がほしい」というお声を具現化できたと感じています。
これまでカードデザインは、ダイナースクラブインターナショナルという米国にあるダイナースクラブの本体が規定したテンプレートの中から選んでいましたが、今回はそのテンプレートを日本向けにアレンジしたことが大きな特徴となりました。しかし、単純に「これが日本ではかっこいいんです」というやり方では、本国のマーケティングチームに納得してもらえません。そこが苦労したポイントではありましたが、第三者機関を通してアンケート調査を行い、上位だった意見を集約して論理的な説明を行ったことが、スムーズな折衝につながり、世界で日本だけにしかないオリジナルなデザインにできたと思います。
-
今回のデザイン変更でもう一つ特徴的なのは、カード番号などの情報をすべて裏面に集約したことです。カード情報を裏面に記載する仕様は海外ではすでにスタンダードで、店頭でカードを見せる時に情報を盗み見されないなど、セキュリティ面のメリットがあります。今回はグローバルなトレンドに合わせて、そのようにしました。ただ、「裏に情報を記載する」と口に出せば簡単そうに聞こえますが、その仕様変更は想像以上に複雑だったのです。カードは単純なプラスチックに見えて、中にはICチップやアンテナが搭載されています。そのため、カード番号を記載する位置には制限があり、これを守らないとカード決済を取り巻くシステムにも影響が出てくるのです。「裏面のこの場所に何ミリ間隔で印字する」など細やかな調整には苦労しましたし、デザインが決まらなければ次のシステム開発に進めないというプレッシャーもありました。
また、「タッチ決済機能の搭載」というミッションの壁も大きかったです。カードを端末にスライドさせたり、差し込んで暗証番号を打ち込むという使い方とは仕組みが違い、お店でタッチ決済が使われた時にどのルートで当社にデータを飛ばすのかなど、そこのシステムのつくり込みやネットワークの修正をしなければなりません。システムベンダーさん、プラスチックのベンダーさん、社内関連部署など、色々な人が絡み合ったので調整が非常に大変でした。
-
今回のプロジェクトはコロナ禍ということもあり、チームのメンバーの皆にはプロジェクト業務とは別の業務もしてもらうマルチタスクをお願いしたので、本当に大変だったと思います。また、他部署の方にも助けていただくことで、何とか進められたという印象ですが、この経験を通して部署間のつながりの強さを改めて感じることができました。カード発行に関すること、パートナーとの交渉、媒体の選定・制作など、それぞれに知見の深い方がおり、皆さんのサポートをいただきつつ、一丸となったからこそ乗り越えられたのだと思います。
そうした心強い助けはありましたが、コロナ禍で想定外のことがたくさん起こり、とにかくスケジューリングには苦労しましたね。システム開発の部分は、テストを含めて「半年」というスピード感だったので、特に厳しかったです。スケジュールが崩れてリカバリーをすれば、次は別のスケジュールに影響するということも度々ありましたが、さまざまな協力があり最終的にはすべてをローンチに間に合わせることができました。このプロジェクトがうまくいったのは、力を貸していただいた皆さんのおかげだと思っています。メンバーの皆の負担は通常業務よりも大きなものになりましたが、それぞれの成長にもつながったという声もあり、本当にやり切れてよかったです。
-
ここ十数年、オリジナルのカードデザインの採用はなかったですし、日本向けのデザインや裏面にカード情報を記載するなど、はじめて尽くしの挑戦を乗り越え、会員様にカードを使っていただいているのを見届けた瞬間は嬉しかったです。この業界に携わって長いですが、自分たちの仕事が世の中で色々な価値を生み出していることを実感する瞬間は、いつだってやりがいを感じますね。また、マネジメントをする立場からすると、メンバーの皆が主体的に自分の仕事をやり遂げ、会員様の反応を見て喜んでいる姿を見た時が、一番嬉しかったです。
しかし、ダイナースクラブカードの日本でのシェアは、まだまだ満足いくものではありません。それは特別なカードとして、私たちがターゲットとなるお客様を絞っていることが理由ですが、伸びしろは大きいと考えています。だからこそ、今後は広告戦略や自社媒体でのコミュニケーションなどが大事になってくるので、そうしたことを強化しながらも、新商品をつくったり、まだ世に出ていないコンセプトの決済手段の提供などを企画開発していきたいと思っています。今回は、60周年でしたが、次の周年までにさらに価値のあるカードに育てていくことが今後の目標です。
※所属部署・部署名は取材当時のものです。